なぜなら、それが砲術の用法に影響を及ぼすわけではないからだ。 砲術の概念は世界共通なのだ。 砲術の概念を習得し、訓練を続けて上達せよ。 それは、少なくとも飛行や戦術の訓練と同じくらい重要なのである。 砲術の概念を習得すれば、自信と優越感を持って戦闘に参加できるだろう。 貴官ほど思うがままに射撃を練習できる敵はいないのだ。 だから、それを最大限に利用せよ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 作戦中はつねに警戒を続けよ!
ぼんやりしていてはいけない!
戦友と共に飛べ。 彼らから離れてはならない。 単機になると間違いなく撃墜されるぞ!
装填されているか? 表示盤に表示されているか? 照準器の電源は入っているか? 照準器の映像は明るすぎないか?
A. 追尾攻撃
真後ろから攻撃する場合、とりわけ正確に射撃を始める距離を見積もらねばならない。 敵は十分接近しているように見えるだろう。 しかし、それは錯覚である。 敵を偏差リングのなかに置いてみれば実際の距離が解るだろう。 双発爆撃機がちょうど水平照準線の隙間にピッタリおさまれば、それは直径の1/5である。 つまり、距離は5×2=1000m である。 |
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ここで射撃すると命中は望めず、敵に警告を与えるだけだ。 だからもっと距離を詰めよ!
さあ、400mだ。敵機の中央を狙え!
短い点射! 照準がずれたら即座に射撃を中止せよ! 敵機の後流には入るな。 機がゆさぶられ、正確な射撃どころではなくなる。 いま、貴官は200mの位置にいる。 |
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命中個所や損傷を明瞭に目視でき、燃料タンクやエンジンなど個々の部分に狙いを集中できる。
いまや完全に正確な射撃ができるのだ。 時間、高度、勝利の記録をとどめておきたまえ。 そして隊列に戻りたまえ。 背後からの単純な攻撃は非常にまれにしか起らない。 通常、撃墜に至るまでにはもっと粘り強さと技量を必要とする。
B.斜め追従攻撃
味方の攻撃で敵の爆撃機編隊が蹴散らされた。 左わずか下方に単機の四発重爆がいる。
まず、偏差リングが敵機の4倍になるまで敵に向かいたまえ。 次に、敵に対して偏差を取るよう機を操縦したまえ。 その位置は次のように見えるはずだ。
距離が減るにつれ、貴官は敵の後方へ回り込み、バンク角は減るはずだ。 その間、偏差をはじめの4Rから滑らかに減らし、敵機の真後ろでは0になるようにせよ。 冷静に待て。方向舵を使いすぎてはならない! 方向舵の修正は大抵いつも乱暴になり、ホウキで掃除するように敵を照準像で掃くことになるだろう。 砲弾の散布界はもともと十分に大きいのだから、このうえ弾着を散らす必要はないのだ。 今、貴官は敵機から400mのところにいる。 偏差は依然大きい。 2Rだ!
標的の移動方向に注目せよ。 貴官の追従が正確でなければ偏差も無意味だ。 標的が少しずつ偏差リングの中心にくるようにせよ。 この位置では偏差は依然2Rのはずだ。 すでに標的は巨大にみえるだろう。 しかし、それは錯覚である。 標的は偏差リングの直径にピッタリあてはまる。 つまり、距離は300m。
Fig31 斜め追従、250m、3/4R Fig32 斜め追従、200m、1/2R Fig33 斜め追従、150m、1/4R Fig34 斜め追従、100m、0R
敵機が落ちるまで。 敵は必ず落ちる!
C.格闘戦
敵戦闘機との空中戦。 貴官は突如としてその渦中にある。
弱気になったら負けだ!
短い点射。 貴官は敵のうしろを撃っているだろう! 偏差を見定めよ、乱暴な射撃をするな! 決定的瞬間のために砲弾を節約せよ。
Fig37 戦闘機、150m、1R そう、それでよし! 撃て! 敵は旋回をきつくする。 敵の機動に追従せよ! 敵の飛行経路に沿った正しい偏差を取り続けよ。
敵はきつい旋回をしている。 敵の内側に偏差を保つよう回り込むことができない。 とにかく敵とともに旋回せよ。じきにまた射撃位置につけるように。
敵は右旋回から左旋回へ転じようとしている。 旋回を切り返したので敵は真正面にいる。まっすぐ狙え! |
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D. 前方攻撃 敵の大規模な重爆編隊が接近してきた。 密集編隊を組んで前方攻撃をかけよ。 貴官は、敵の正確な飛行経路を見極めることができるよう、敵爆撃機の編隊に接近しなければならない。 次に、攻撃する敵編隊が水平尾翼ごしに見えるまで、つまり、敵の4000〜5000m前方に出るまで、同じ方向に 飛び続けよ。 敵編隊を追い越してから5〜7分で、正しい距離につくことができるだろう。 スロットルをわずかに戻して急旋回で廻りこめ。 さあ、精密な接近飛行の始まりである。 自機の位置を入念に確認し、正確に真正面から接近すること。 このような距離では、方向の微妙な狂いは見分けにくい。 最初その誤差は微々たるものだが、戦闘距離においてはすぐに大きくなり、偏差も突然に増大する。 短時間ではとても対処できない。
つまり、相対距離は毎秒250m減少している。 相対距離800mから300mの間に射撃できる。 つまり時間は2秒間ある。
用意! |
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Fig.42 四発爆撃機、距離900m
機体表面のわずかに上を狙って撃て!
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