T 概説

銃手諸君! 貴官の知識、能力、勇気、抜け目なさに、搭乗員全員の命と安全がかかっていることを忘れるな。
銃手の部署に熟達せよ。そうすれば、搭乗員たちの間でひっぱりだことなるであろう。
出撃の合間には、武器係と共に銃手の部署を監督せよ。
貴官は良き戦友でなければならない。 武器係の仕事を手伝うことによって、彼が職務に気を使っていることを確認せよ。  

A. Ve−照準器
 
(Ve22、Ve45etc )
Ve−照準器は、狙った方向から弾が偏向しないよう、機の速度にあわせて調整されている。
Ve−照準器を使えば、地上で射撃するのと同様の正確さで射撃ができる。
武器係をのぞき、誰にも照準器に触らせてはならない。
もし照準器が汚れていたり、動いていたり、曲がっていたりしたら、貴官と搭乗員全員は怠慢の代償を支払わねばならなくなるだろう。
         
B. 反射式照準器

反射式照準器は、照準リングと照星によってではなく、傾いたガラス板に照明で映しだされる十字線と偏差リングによって照準をおこなう。
特殊な仕組みによって、照準像は目標に貼りついたようにみえる。そのため、つねに目の焦点を合わせていられるのである。
また、頭を動かしたときも、照準器を移動しなくても照準像は標的の上に見えるだろう。
何にも増して、両目で簡単に照準ができるので、敵機の動きをより正確に観察できる。
もし、空がとても眩しくて照準像が見えにくければ、照準軸線上に薄い色付きガラスを挿入することができる。そうすれば、照準像は好みの明るさにできる。
射撃スイッチ盤の”レフィ”の遮断器を押し、照準器のスイッチを入れても、照準器が点灯しないときは、照準器左端の機械式照準器を使うことができる。飛行後ただちに照準器をチェックすること。           
    Fig.1  Ve45型機械式照準器

すべての反射式照準器はVe−調整されている。これは、架台の回転か、フレキシブルな連接棹による照準器内部での調整によってなされる。
これらの照準器も、常に正しく調整されていなければならない。
照準器は注意深く扱い、他人の手から守ること。そうすれば貴官は照準器が確実に作動することを確信できる。
それは、貴官の命、貴官の愛機、そして搭乗員を守る助けとなるであろう。            
    Fig.2  反射式照準器
C. 調整

小銃で”牡牛”を狙えば、たやすく命中させることができるはずだ。ただし、それには照準器が正しく調整されていなくてはならない。
機関銃と照準器も、同様に調整されていなくてはならない。
武器係がその調整を成し遂げねばならない。 そのために、武器係は各種の射表や器材をもっている。
しかし、貴官はなおかつ調整が正しいことを確かめねばならない。  
つぎの項目をチェックすること。
a) Veスライドの機別スピード調節を0にセット
b) 照準器と銃の軸線が合っているか。これを確認するには、目標のいろいろな位置に試射をしてみて、照準と弾着が一致していればよい。
c) ここで、機のスピードにVe-スライドをセットする。
d) 何種類かの照準器には、Ve-スライドに小さな矢がついている。 これは、飛行方向に向けなければならない。
e) そのような矢印がない場合、銃を旋回させてチェックせよ。 銃が前方にむいているなら、銃を上下、左右に動かしたとき、照準器は銃よりゆっくり動く。銃が後方にむいているなら、銃を動かすと照準器は銃より早く動く。
f) 最近の銃座には射界制限機能がある。 機械的または電気的な機構で、自分の機体を射たないようになっている。
これらの機構が正しく調整されていることを、納得のゆくまで確認せよ。
g) もし欠陥の疑いを抱いたり、見抜いたりしたら、即座に調整させよ。そして、いずれは自分でも出来るようになるよう、その仕事を手伝いたまえ。     

D. 武器の整備

武器の整備を進行するのは、武器係の仕事である。
もし貴官が整備を習い、自分で整備を手伝い、武装を汚れや破損から守れるのならばなおよろしい。
武器係の余分な仕事を減らし、作業が注意深く行なわれることを確実にするだろう。
歩兵が小銃を扱うように自分の火器を扱いたまえ。 武器係をのぞいては誰にも触らせてはならない。
仲間の搭乗員が貴官の武装を尊重していても、である。
機に乗りこむ際、彼らは銃をステップに使ってはならないし、パラシュートを引っ掛けてはならないし、踏んでもいけない。
 
機関銃を不要な汚れから守ること。エンジンがかかり、機がタキシングしているときには、とくに注意すること。
そのような見落としのために銃が動かなくなったら、貴官の機には守りがなくなり、他の搭乗員は苦い結末を味わうことになるだろう。
弾薬も手入れの一部である。弾薬が正しく給弾ベルトにされているか確かめよ。
もし実包が正しく挿入されていなければ、−深すぎるか、十分に深くないかのいずれか− 作動停止を引き起こすだろう。
保弾子もチェックせよ。保弾子は無期限に使えるわけではない。
緩くなったり、曲がっていたりすれば、動作不良を引き起こす。
もし動作不良が起こったら、落ち度は自分か武器係に見いだせ。 ドイツの工業、ドイツの労働者を咎めてはならない。

    貴官の銃は世界最高である。
  貴官は世界最高の銃手たるべし。

    U プリフライトチェック

A.弾薬・・・弾薬箱はいっぱいか? 実包は正確に給弾ベルトになっているか? 適切な種類の実包が、指示された順序で給弾ベルトになっているか? 給弾ベルトは砂やほこりがついていなくて、正しく塗油されているか? 給弾ベルトは火器に装填できるか?             
B.武装の状態・・・銃架にしっかり固定されているか? 制退器がしっかり固定されているか? 遊底は作動するか? 装填、射撃ができるか? 備品は補充されているか? 銃がきれいで正しく(多すぎず)塗油されているか? 前回の飛行での不具合が正されているか?            
C.照準器の状態・・・調整がチェックされているか? Veスライドを機のスピードにセットせよ。 遮断器を押し、照準器のスイッチを入れたあと、照準像が照らしだされるか? ガラス板と防眩スクリーンの調子はよいか?             
D.銃架の状態 ・・・銃架が全ての方向に手動もしくは電動(供給されていれば)で回転、旋回ができるか? 風防はきれいで、外が良く見えるか? 装甲板の調子はよいか?           
E.インターコムの状態・・・飛行帽を被ったあと、インターコムの感明は満足がゆくか?
飛行中に任務を全うできるよう、離陸前に全てをチェックし、故障のないことを確かめよ。
眼を見開け!そうすれば、貴官を驚かし得る敵はいないだろう。貴官の見解を簡潔明瞭にパイロットに報告せよ。
マニュアルで指示され、例と用法に指示された方法で射撃せよ。
冷静さを保て。そうすれば、貴官の武装が本当はいかに優勢かすぐに気づくだろう。
そして、敵機は実際ほとんど何も出来ないのを悟るであろう。

    V 砲術

A. 序

1. 偏差とは何か、どのようなとき応用するのか。
     動いている車から物を放り投げると、移動方向に一定距離を移動する。
     同様に、動いている手押し車から飛び上がった者は、手押し車の移動方向に一定の距離を移動するだろう。

2. 飛行中の機体から射撃を行った場合、弾丸は機の速度に影響され、機の移動方向にそって一定の距離を運ばれるだろう。
     これを図示すると以下のようになる。
    Ve=機体固有のスピードのベクトル
    Vo=弾丸のベクトル
    Vr=結果的な弾丸の速度と方向
    H=照準点
    T=弾着点
    Fig3  飛行機からの射撃

    そのため、H点を狙った場合、弾丸はT点に命中するだろう。
    だからT点に命中させるには、距離Veを補正しなくてはならない。これが距離Veに見合う偏差である。
    Ve照準器はそれを自動的に行う。 Ve照準器でT点を狙えば、弾はT点に命中するだろう。

3.飛行中に敵機を射撃する場合、敵機の前方を狙わなければならない。
    なぜなら、弾は敵機に命中するまでに一定の時間を必要とし、その時間に敵機はある距離を前方に移動する。
    これを図示すると以下のようになる。
    Vr=結果的な弾の速度と方向のベクトル
    Vz=敵機の速度
    T=弾着点
    Fig4  動いている標的への射撃
  Vzの影響を補正するには、偏差をとらねばならない。

4.照準器がVe調整されていれば、単にVzの偏差を当てはめるだけでよい。
    偏差の設定は、W章の解説や参考写真を参照のこと。

B. 射撃技術

1.設定した偏差が敵機の軸線上の前方にくるよう照準すること。
2.敵機との距離が少なくとも600mまで近づいたら射撃を始め、曳光弾によって正確に修正せよ。
3.敵機の近くの曳光弾のみ注目せよ。さもないと、曲線を描く弾道に惑わされてしまう。
4.短く、素早い点射のみ行うこと。
5.敵機の飛行経路にそって銃を旋回させ続けること。
6.手当たり次第に射撃するだけでは駄目だ。 それでは命中は期待できない。
    弾丸を撃ち尽くし、あっさり敵機の餌食となってしまう。
7.冷静沈着であれ。 これらの指示に従い、参考写真に示された通りに射撃すること。
    そうすれば必ず上手くいくだろう。

    W 照準例

A.解説

1.次に示す写真は、敵機の横幅が広く見えるほど偏差も大きくなることを表す。
2.ここに示す偏差は全ての敵戦闘機に対して有効である。
3.偏差は、偏差リングの半径を基準に測定する。「1R」は「偏差リングの直径の半分」1つ分である。
    Fig5  偏差リングの半径
4.敵機が向かってくる場合、偏差は0である。
    偏差が最大となるのは、敵機が平行して飛んでいて、横腹が全部見えるとき。 このとき偏差は6Rである。
    その中間については、以下の表を用いよ。
    奥行きの縮み方       偏差
       0                          0R
    1/6                       1R
    2/6                       2R
    3/6                       3R
    4/6                       4R
    5/6                       5R
    6/6                       6R
5.通常の攻撃に対しては、偏差は0から3Rまでとなる。
     これらは習得すべき最も重要な事柄である。

B.参考写真

Fig6  偏差0(Ve22)
真正面からの飛行機
Fig7  偏差0(Revi)
真正面からの飛行機
Fig8  偏差1R(Ve22)
全長の1/6に縮まった飛行機
Fig9  偏差1R(Revi)
全長の1/6に縮まった飛行機
Fig10  偏差2R(Ve22)
全長の6/2に縮まった飛行機
Fig11  偏差2R(Revi)
全長の6/2に縮まった飛行機
Fig12  偏差3R(Ve22)
全長の6/3に縮んだ飛行機
Fig13  偏差3R(Revi)
全長の6/3に縮んだ飛行機
Fig14  偏差6(Ve22)
横面が全部見える飛行機
Fig15  偏差6(Revi)
横面が全部見える飛行機

前の章へ
目次へ戻る
トップページへ