今年は新規4アイテム、改版3アイテムを発売することができ、また一歩野望に近づいた感じでしたが、あいかわらず石垣だけは進みませんでしたねえ。
・・・来年があるさ。
それでは皆様、よいお年をお迎え下さい。
「嘘ではない、確かに見たのじゃ」
「フゥ、やれやれ。また爺さんの妄言が始まったぞ」
「本当なのじゃ、儂がまだ若い頃、この店の常連さんが見せてくれたのじゃ。フジミの光る薬師寺を」
「爺さんゴメン、もうナニ言ってんだか分かんねーよ」
「アオシマの光るガンガ・ルブと記憶がゴッチャになってるとか?」
「ぐぬぬ、こんクソガキどもはいつもいつもホンマに・・・」
鉄道の廃線跡などもそうですが、痕跡というものは元の状態がどんなだったのか気になるものです。
戦車の古いプラモなど、電池ボックスの痕跡が残っている物がありますが、これは言うまでもなくモーターで動いた時代の名残ですね。
しかし、フジミの薬師寺東塔に電池ボックスのモールドを発見したときは、さすがに我が目を疑ったものでした。
まさか、薬師寺東塔がモーターで走ったのか、それとも扉が自動開閉するカラクリでもあったのか。
それはそれでスッゲー欲しい、完成させて仲間に自慢するんだ。
しかしギミックが生きている旧版を入手してみると、やはり内容は常識的な線で、豆電球を内蔵して光らせる仕組みでした。

ギミック付属バージョンは「照明装置付」と箱に書いてあります。

この統一デザインの箱で照明装置を有する個体もあるし、そうでない物も確認できますので、おそらく70年代の後半に照明装置が省略されたのだと思います。
ギミック自体は単純なもので、三つの豆電球とその支柱、単一電池二本をセットする電池金具と配線、スイッチから出来ていました。
もちろん現行のキットに照明装置は付いていませんが、上記の部品を自作すれば現行品をベースに改造することも可能でしょう。

同社の1978年版カタログによると、この機能はムードランプに使えるそうです。
薬師寺が光ったところでムードもヘッタクレもあるものかと思いましたが、実際に作って点灯してみると意外に綺麗で、なかなか隅に置けません。
照明装置の性能はと言うと、さすがに単一電池の容量は半端ではなく、一晩くらい平気で光り続けています。

まあ、当時はビン詰めの五重塔を光らせたりとか、扇風機を光らせてカクテルファンと銘打った商品もあったくらいなので、この程度で驚いてはいけないのでしょう。
写真はその五重塔を光らせる河合商会のインテリアボトルホビーシリーズ。照明ギミックは、ビンの首の部分に豆電球と電池を内蔵する仕組みでした。
五重塔はグリーンホビー箱庭シリーズの流用で、逓減率、軒の張り出し、初重に裳階を備える点からして、法隆寺五重塔をモデルにしたものと思われます。

アイテムはヨット、五重塔、おでんや、フラワーの四種類がありました。中でもおでん屋台のビン詰は、ご覧のようになかなかシュールないっぴんです。

最後になりましたが、ゴールド薬師寺東塔の完成写真を掲載します。
建物シリーズのゴールド版は現在は生産されていませんが、オクでもさほど高価になるアイテムではないので、気長に探せば入手は困難でないと思います。
何も考えずにパカパカ組めるので、意外と楽しいものです。興味のある方はぜひ一作をお勧めします。
「嘘ではない、確かに見たのじゃ」
「フゥ、ヤレヤレ。爺さん、また例の話かよ」
「本当なのじゃ、儂がまだ若い頃、この店の棚にあったのじゃ。大天守だけ別売のフジミ1/300姫路城が」
「相原の小田原城と間違えたんじゃねーの」
「大天守だけ別売って、鯛のおかしらだけ別売みたいな感じだな。どんな残飯だよ」
「違えねえ、ゲタゲタ」
「ぐぬぬ、ゆうてくれた喃・・・」
あいかわらず濃ゆいですね。
さて、虎眼先生っぽい爺さんの証言は真実なのか、はたまた妄言なのか。
実をいうと、大天守だけ別売の姫路城は実在したのです。
50年史DBでフジミ1/300姫路城、白鷺城を検索すると、次のアイテムが出てきます。
なおフジミ建築モデルシリーズでは、姫路城のカラー版を「姫路城」、金メッキ版を「白鷺城」と呼んで区別しています。
「姫路城 大天守閣」 800円、1965年10月
「姫路城 小天守閣」 700円、1965年11月
「デラックス 姫路城」 1,300円、1966年3月
「デラックスゴールド 白鷺城」 1,500円、1967年1月
最初の二つが初版で、大天守と小天守がそれぞれ単品で発売されました。二つを組み合わせると天守曲輪を作ることができます。
残念ながら実物は所有していませんが、フジミの65年カタログにも同様の記述があり、現物をヤフオクで目撃したこともあるので、初版がこの形態だったのは間違いないようです。

画像は「デラックス 姫路城」と思われるバージョン、カラー版の大天守と小天守のセットです。
「デラックス」は大天守と小天守のセットを意味するようです。

写真左は「デラックスゴールド 白鷺城」、金メッキ版の大天守と小天守のセットです。
写真右は50年史DBに載っていませんが「ゴールドモデル 白鷺城」、金メッキ版の大天守のみ別売です。
以上からすると「ゴールドモデル 白鷺城」がミッシングリンクになっている訳です。
ゴールド版もカラー版と同様に、初版は大天守と小天守が別売されたのか。
あるいは「デラックスゴールド」と「ゴールドモデル」が同時期という可能性もありますが、時系列として不自然です。
やはり整理すると、初版はカラー、ゴールドとも大天守と小天守を別売したが、のちに「デラックス」と名づけてセット販売に切り替えた、そのように考えた方がスッキリすると思います。

これはたぶん70年代のバージョン。この頃になると大天守や小天守の別売は存在しないようです。
このような変遷には、どんな理由があったのでしょうか。
別売方式はメーカー側からすると、開発が完了した部分から順次発売できたのはメリットかもしれません。
ユーザとしては、少ない小遣いでも分割して買える、気が向けば小天守を買い足せる、そのような意味では良いアイデアにも思えます。
しかし、それは両者が都合よく在庫していればの話で、あまり現実的ではないでしょう。ネットの検索や通販がない時代だけに猶更です。
小天守が欲しくても売り切れの場合もあるでしょうし、逆に小天守だけ売れ残ったら模型店が困ると思います。
そのような理由から、結局はセット方式に切り替わったのではないでしょうか。
国産プラモが生まれて10年にも満たない時代、メーカーもいろいろな売り方を模索していたのでしょう。
相原模型の浅荵綾威鎧兜も、初版は鎧と兜が別売でしたが、のちにセットに変更されています。
もし田宮が88ミリ砲の砲と台車を別々に発売していたら・・・便利だったのかなあ。いや、あれもやはりセットでないと、あの豪華で大人びた気分は味わえなかったはず。
以上のように、フジミの1/300姫路城は長い歴史のあるキットで、現在流通している中では最古の城プラモです。
にも関わらずプロポーションは良好で、部品分割が合理的なため、姫路城にしては作りやすいキットに仕上がっています。
当時のフジミ建築モデルがいかに優れたシリーズであったかを窺い知ることができると思います。
ちなみに、最新版のことは知りませんが、90年代の再販でも姫路城のインストは「大天守」と「小天守群」の2冊に分かれていました。
これは大天守と小天守を別売していた時代の名残と思われます。
Amazon
フジミ模型 1/300 大姫路城
「嘘ではない、確かに見たのじゃ」
「フゥ、やれやれ。爺さん、また例の話かよ」
「本当なのじゃ、儂がまだ若い頃、この店のショーケースで見たのじゃ。見事な銀メッキに輝くフジミの銀閣を」
「パクトラタミヤのクロームシルバーでも塗ってあったんじゃねーの」
「違えねえ、ゲタゲタ」
「ぐぬぬ、ゆうてくれた喃・・・」
なんて話を常連さん達が交わしている模型店が本当にあったら色々な意味でイヤンですね。
それはそれとして、フジミの銀閣といえばウッドブラウンの成形色がおなじみですが、銀メッキの銀閣など実在したのでしょうか。
結論から言うと、フジミの銀閣には二種類の銀メッキ版がありました。
ひとつは初版かそれに近い版、もうひとつは金閣とのセット商品「京の名園」です。

写真の箱はたぶん第二版ですが、中身は初版も同様です。発売からしばらくはメッキ版だったものと思われます。

銀メッキを基調に、屋根が焦げ茶、土台がグレーで塗装済み。鳳凰は珍しい銅メッキ(銀メッキにクリアレッド吹付)。
銀箔を貼ったという説が当時はまだ否定されていなかったので、このようなアレンジになったのかもしれません。
ただし箱の完成見本は木調に仕上げられています。

金型の本来のレイアウトは・・・こうですかわかりません><
なお、当時を知る方の証言によると、同梱の接着剤はメッキを溶かしつつプラスチックを接着することができたそうです。
便利そうですが近年は見かけないので、何かヤバい成分でも入っていたのかも。

1/150の金閣と銀閣に真空成型のベースをセットした「京の名園」、発売は1974年、定価1,000円。

このセットの銀閣は屋根も含めて全体が銀メッキで、鳳凰のみ金メッキでした。
一般にフジミの建築キットは組みやすいのですが、特に銀閣は古いわりに精度が素晴らしくスラスラ組めます。
以上の事を覚えておけば、模型店のショーケースで銀閣の完成品を見たときに正確な鑑定ができるという訳です。
えっ、門や橋がついている箱庭みたいな銀閣のプラモを見た? うーん、それはきっと東京シャープの庭園モデルシリーズですね。
まあアレです。一筋縄ではいかないというコトで。
河合商会の一件はまことに残念でした。
今できる事といえば、キットを買って、ささやかながら感謝と応援の気持ちを届ける事だけです。
というわけで、私の好みで選んだお勧めキットをご紹介します。

風物詩シリーズの中で一番のお気に入りは「屋台そば」、定価700円。手軽にかわいらしい屋台が出来上がります。
「駄菓子屋」も中々なのですが、私のイメージする駄菓子屋とはちょっと違うので次点としました。
でも、東京の下町で幼年期を過ごされた方々にはストライクゾーンど真ん中かも。

グリーンホビー箱庭シリーズからは、五重塔や東屋も捨て難いのですが、やはり「田舎の駅」を推しておきます。定価は1,200円です。
昨今ではトミーテックのジオコレなど塗装済み駅舎も手に入るようになったとはいえ、このキットもなかなか味わい深いものがあります。
鉄道コレクションやバンダイBショーティーを飾っても面白いです。
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