松江城資料集
■祝発売
お城プラモに異変あり? PLUM の1/200高島城に続き、今度は童友社の1/500松江城が発売間近です。
もちろん初のインジェクションキットで、五層六階の規模は現存十二天守の中では最後の大物。城プラモ史を語るうえでも大きなイベントと言えるでしょう。さっそくHobby Japan10月号に素晴らしい作例が掲載され、いよいよ盛り上がって参りました。
この快挙に感謝して、プラモデル作りに役立つ資料集をお送りしようと思います。
■松江城修理工事報告書
ネットを検索して「松江城天守修理工事報告書」を探して下さい。PDFを閲覧できます。
なかでも「重要文化財松江城天守修理工事報告書(2).pdf」は四枚の側面図や内部構造の図面、細部の写真など、模型的な資料価値も高い内容です。
側面図には石垣のパターンもかなり正確に描き込まれており、隅角はほぼ完璧、主要な平石もトレースされています。モールドを彫り直す場合には頼りになるでしょう。
こんな資料が公開されてるならオレの出番もうないじゃん、とも思ったのですが、それでも報告書からは読み取れない色彩や細部、報告書に記載のない部分などは紹介する意味があると考え直し、コンテンツを作りました。
■資料集
全体像はよく見かけるので、普通は撮影しないようなディテールを中心にお送りします。

天守の軒下。白い胡粉塗りのラインがアクセントになっています。壁の木部は墨塗でフラットブラックですが軒下の木部はレッドブラウン、先端のみ白。なお懸魚の小口も白です。

破風大棟の鬼板は緑青、写っていませんが鯱も同じです。

地階に展示されている鯱。

五重西面。妻壁は板張りで、報告書では胡粉塗とあるが現状は白っぽいウッドブラウンに見えます。

鳥衾は潜望鏡というか水道管の継手というか、何とも妙な形をしています。
●窓

附櫓東面と天守地階南面。格子と突上戸のディテールに注目。松江城の突上戸は外側に凸モールドがなく、筋彫りもあまり目立たないので、1/500であれば窓の大きさに切ったプラ板を貼っておけば十分かと思います。
大部分の格子は外側に突上戸を備えますが、ない部分もあります。三、四階の格子は内側に木の引戸がありますが、一、二階の格子は内側に建具を持ちませんので、突上戸を開いたとき格子の向こうは常にスケスケです。
天守地階南面のみ鉄格子が入っています。附櫓の窓は格子です。格子の本数は各部で異なります。以上、詳しくは報告書の図面を参照して下さい。
●望楼
平面図は前述の報告書(2)の第七図、窓の詳細は第33図に載っているので、その気になれば板戸を開け放った状態に改造することも可能でしょう。

内部。階段が西側。

板戸の収納方法を示します。戸袋の外壁を持たない独特の構造です。収納位置は、東西面の北側は角寄り、それ以外は角から内側に半間ずれたところです。報告書(2)の第七図を参照。
一辺に二か所あり、各々に板戸四枚を収納するので、計八枚を収めることができます。ところが南北面の板戸は各々十枚なので全部は収まり切らず、全開状態でも両端二枚ずつ板戸が見えています。
なお現状では一部の板戸はガラス窓になっています。

高欄を外側より眺める。東西面は下の屋根が壁まで伸びているので、屋根のすぐ上に高欄が見えます。各部の塗り分けにも注目。高欄の墨塗りはだいぶ薄くなっています。
●附櫓

附櫓の軒下は天守と異なり漆喰で塗り込めてあります。

門と扉は鉄張りです。フラットブラックにレッドブラウンのウェザリングがかかっています。
●地面
情報量を増やそうとするなら、地面に手を加えるのも一案です。排水溝など意外と多くのディテールがあります。

南から東面を眺める。天守台は地元の山で採れた玄武岩や安山岩で出来ています。割石の断面をみると、グレーがベースで、風化するとダークイエローに変化するようです。

東から北面を眺める。

北面。天守台の直下に瓦を埋めてあります。西面から附櫓までも埋めてあるようですが、芝生に覆われ不明瞭です。

附櫓前面。

排水溝の配置を図示します。高石垣に雨水が浸み込まないよう気を使っているのが分かります。
●腰曲輪

南から眺めたところ。

もうちょい遠くから。

北面の現状。日光が届かない北面の石垣は苔むして緑色になっています。
●追記
当店では本キット専用のエッチングパーツを用意しております。詳しくは
お店をご覧ください。
2016.8.25更新
石屋模型店TOPへ