■刀のプラモを作る
●刀身を単体で飾る
刀が欲しいが本物は高いので、かわりにプラモを作ってみようと思う。
材料は童友社の名刀シリーズ。ただし今回は樋を彫ってみるので「豊臣秀吉」は避ける。「豊臣秀吉」の刀身には彫り物が再現されているから、それを潰すのは勿体ない。
キットは刀装具がメインの構成だが、今回は刀身を単体で作ってみる。
●ディテールアップ
樋を掻く
すべての刀に樋があるわけではないから面倒ならサボっても構わないが、やはりコレがあると刀身が引き締まる。
コンパスでケガキ線を引く。
メッキのまま作業したほうがコントラストが鮮明で形状を把握しやすい。ただし刀の棟を基準線にするので、ここだけは湯口やバリを削って滑らかにしておく。
刀の棟にコンパスの鉛筆側をあて、刀身に沿って滑らせ、針で軽くひっかいてケガキ線を引く。
基準位置は先端で棟と鎬の中間として、この幅をキープし、棟と平行にケガく。あまり力を加えず、何度も繰り返して溝を彫ってゆく。
太い針でさらに溝を深くする。
溝にそって彫刻刀の三角刀で彫る。少しくらいデコボコしても、あとで丸ヤスリで磨けばスムーズになるから気にしない。
丸ヤスリが入るくらいの溝が彫れたら、いよいよ樋を掻く。このとき手元に行くほど鎬側に溝を広げ、滑らかなテーパーをつける。棟との間は平行を維持する。
メッキを落とす
トイレの洗剤サンポールに漬け込んでメッキを落とす。
表面仕上げ
刀身全体に溶きパテを塗る。ここまでの作業で刀身にかなりの傷がついているからだ。刀身の中央部はヒケが見られるのでパテを厚めに塗る。
乾いたらペーパーで磨きだす。もう気分はすっかり刀鍛冶である。
茎(なかご)
キットは短すぎ、幅も狭い。
1.2mmプラ板を貼り付け、形を整える。樋を茎まで掻き通す。茎を作ったあとで樋を掻けばよかったと後で気づいた。
このあと溶きパテを筆で叩きつけて質感を表現し、目釘穴を開ける。
銘を刻んでみるのも面白いと思ったが、米粒みたいな文字で「備前国住長船与三左衛門尉祐定」なんて彫るのは私には無理。器用な方は挑戦してみて下さい。
なお、茎を拡張した刀身はキットの柄には装着できないので注意。
●塗装
金属色は塗膜がザラつかないよう薄めに調合し、吹きつけた塗料が平滑になるタイミングを見極めながら吹く。
ベースの鉄色はほとんどグロスブラックで、銀色はほんの少々、隠し味にブルーを混ぜる。写真は刃紋をマスキングしたところ。塗り分けが微妙にボケるよう、マスキングをわずかに浮かせておく。
刃の部分に薄くシルバーを吹き、次にグロスブラックと銀色が半々の鉄色を吹く。このときシルバーを部分的に残して沸を表現する。
●飾りつけ
あとは茎を錆色に塗ればよいのだが、なんかもう力尽きたので、とりあえず飾ってみる。
刀掛けに白布をかけて飾る。布は手芸用品店で200円くらい。
太刀は刃を下に、打刀は刃を上に向けて飾る。茎は左。

上手に出来たかどうかは置いといて、作っていて意外と面白かった。
それにしても日本刀の造形はゴマカシが効かない。その点は正直に言って不満足な出来である。てゆうか、刀鍛冶ってすげーと思った。
童友社の名刀シリーズは相原模型が開発し、緑商会、童友社と金型が引き継がれたものである。
このとき比較的メジャーなアイテムのみが選択されたようで、相原が造った全ての武具プラモが再販されている訳ではない。
選に漏れ消えていったアイテムのなかでも、ひときわ異彩を放っていたのが「金銀鈿荘唐大刀」であった。これは名刀シリーズではなく1/2国宝シリーズという、ひとまわり大きなサイズで模型化されていた。
1968年3月発売、定価400円。シリーズ名からすると正倉院御物を片っ端から模型化するつもりだったのかもしれないが、発売が確認できるのは今のところこれ一種類のみである。
2011.4.17更新
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