■犬山城の天守台と地形

●天守台

キットのパーツはよくできており、四角四面な形状、横長の石を多用した野面積みなどが表現されています。土台は正面の階段はもちろん、大杉様の生えている部分まで再現されています。 ただ石のサイズは実際より大きめなので、彫り直すならもっと細かく、ところどころに横長の石を混ぜると感じが出ます。 細かく見ると勾配はやはり実際より急で、特に南北面で顕著ですが、全体のイメージを大きく損なうものではありません。
なお天守台の下の段は、階段など平面形はほぼ正確ですが、高さは実測1.3mのところがキットはスケール換算で3mくらいありますので、ベースを作り直す場合は要注意です。1/300のキットなら身長5〜6mmの人間になったつもりで眺めると雰囲気を掴めると思います。
色は写真をご覧下さい。犬山城や高知城のようにチャート(堆積岩の一種)を用いた石垣はダークイエローをベースとした賑やかな配色です。

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石垣の色と積みかたの見本

●地形

犬山城が建っている山はチャートで出来ています。周囲の柔らかい地層が浸食されて生じた地形です。 模型的に気になるのは寸法ですが、1/2500犬山市都市計画図によると天守台地面の標高が83.8m、木曽川の河原が37.5mなので、水面から天守台地面までの比高はアバウト47メートルくらいです。 したがって1/300なら高さ15.6pで、城プラモの箱を3つ積んだくらいの高さです。この程度ならスケール通りに再現してもそれほど邪魔にならないでしょう。

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地形がよく見えるように冬枯れの季節を狙って撮影したのですが、山は憎らしいほど緑色で地面はまったく見えませんでした。

●千貫櫓関連のディテール

天守下西面の石垣は千貫櫓に降りる通路があるため、ちょっと複雑な形をしています。

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天守北面(川側)から見下ろす。左端の折れ曲がりに注目。

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問題の部分を今度は天守南面(正面側)から眺める。北面と西面の高さが異なるため奥に段差が生じています。

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天守西面から見下ろす。一段下がったところに千貫櫓の跡地らしきものが見えます。

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古写真などから推測した千貫櫓関連の配置とサイズを示す。図は北(川側)から眺めたところ。他のキットから建物と土塀を流用すれば作れそうです。千貫櫓の屋根の向きは古写真では不鮮明ですが、このように推測してみました。 天守横から千貫櫓へ降りる部分は茂みに覆われ何も見えませんが、備中松山城みたいな背の低い土塀で囲まれていたのではないかと想像。 なお、麓には土塀や水の手櫓などがありましたが、これらは作図できるような資料が入手できないので省略しました。

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上は参考画像、備中松山城の土塀。

●大杉様

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●地形図面

犬山城といえば、やはり誰もが木曽川の断崖に屹立する姿を思い浮かべるでしょう。以下に図面を掲載しますので、崖をスクラッチする際の参考にして下さい。pdfを原寸で印刷すれば1/300の実寸図になります。 フジミのキットから天守台のみ切り離して流用し、それ以下をスクラッチする想定で作図しています。 これらの図は横山住雄氏の実測平面図、ならびに1/2500犬山市都市計画図をベースに、現地での観察や古写真、修理報告図面などの情報を加味して作成したものです。
※各サムネールからpdfへリンクが張ってあります。pdfの閲覧にはAdobe Readerが必要です。
※注意
フジミのキットに合うよう調整を加えていますので、地図としての正確さは備えていません。
現地は天守南面以外は立入禁止で、観察できない部分はかなり多く、推測で作図した箇所だらけです。
等高線は地図のトレースそのままではなく、現地での観察に基づいて大幅に改変してあります。もちろん測量器具など持ち込んだわけではありませんから、たいして正確な図ではありませんが、東から眺めると急斜面なのに西からは緩やかに見える複雑な地形をできるだけ再現したつもりです。
以上のように、これらの図に学術的価値はまったくありませんし、模型的にも怪しいものです。似ていなくても責任は持てませんのであしからず。

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天守台周辺の平面図(A4サイズ)

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天守台周辺の側面図(A4サイズ)

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地形図(A3サイズ)


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